アテネ最終予選兼アジア予選登録候補メンバーに思う
アテネ五輪世界最終予選兼アジア予選(OQT)登録候補メンバーが発表されました。男子のメンバー表を眺めてみて、思うところがありましたので、少し。あくまでも個人的な意見です。素人の戯言だと思って、適当に読み流してください。
正直、男子候補の選出基準には「?」が3つくらい付きます。そもそも、W杯の時点で「?」だったんですが、今回もまったく同じことをしているので更に「?」です。
その為にはまず、W杯時のスタメンを見てください。
山本隆弘(松下電器)
加藤陽一(PAOK、当時)
越谷章(東レ)
尾上健司(JT)
伊藤信博(堺ブレイザーズ)
宇佐美大輔(NEC)
津曲勝利(サントリー)
分かりますか?そう、見事に所属チームがバラバラなんです。ご丁寧に、リベロの津曲選手まで含めて。
女子がW杯である程度の成績を残せた一つの要因は、攻撃の軸が一本、いや二本、しっかりしていたからだと思います。一本は杉山選手。一本は高橋選手。この二人が要所できっちり仕事をしていたからこそ、メグカナがあれだけ活躍できたんでしょう。そして、その二人と絶妙なコンビネーションを生み出していたのが、セッターの竹下選手。彼女、現在はJTに所属していますが、元はNECに所属しており、全日本も含めて長い間、杉山・高橋両選手とコンビを組んできました。そこから来る信頼感というか、阿吽の呼吸というか、付け焼刃では決して生み出せない力が、全日本女子の攻撃を支えていました。
日本は、高さとパワーでは諸外国に劣ります。では、オリンピックでメダルを取る為に、何で勝負すれば良いのでしょう。精神論云々なんかもありますけど、やはりプレーの精度を増すことではないでしょうか。
それは、速くて強いサーブを狙ったところへ的確に打つことだし、相手の強烈なサーブをきっちりとセッターへ返すこと。そして、セッターとアタッカーの正確なコンビネーションでしょう。
W杯での全日本男子は、あまりにもセンターからの速攻が少なかったように思います。近代バレーではセンターからの速攻が少なくなる傾向にあるとは言え、いくらなんでも少な過ぎました。センターがブロックを引きつけられない為に、レフトやスーパーエースの負担が増えました。もちろん、速攻が使えなかったのにはサーブカットの返球(成功)率が低かったことと、センター二人のスキルの問題もあるでしょうが、何よりセッターとのコンビが合っていなかったのが最大の原因だと思います。
この、セッターとアタッカーのコンビネーションは、そん所そこらのコンビネーションではダメです。劣っている高さとパワーを補おうというのですから、少なくとも諸外国よりも精度を高めなければなりません。そんなコンビネーションが、たった数ヶ月の合宿で培われるものでしょうか。否。これは長年同じコートで、同じチームでプレーしてこそ、初めて生まれてくるものでしょう。
ちなみに、選手同士のコンビネーションというのは、何も攻撃の時に限った話ではありません。例えば、サーブカットにも関係があります。スパイクサーブは、相手選手の手から放たれて自陣コートに突き刺さるまで、0コンマ何秒の世界です。当然、打たれてから反応したのでは遅いです。相手のフォームを見てある程度コースを読むわけですが、この時、レシーブをする選手の守備範囲がとても重要です。そのボールは誰が取るのか、瞬時に判断しなくてはいけません。いや、正直なところ、判断している暇なんてないです。だから、それぞれの守備範囲を、体に覚え込ませなければなりません。これも、一朝一夕では成し得ないコンビネーションです。
W杯の戦いを見て、私は全日本男子の一番の強化ポイントは、センター線の強化だと感じました。それも、ブロックではなく攻撃面での強化です。理由は前述の通りですね。ブロックを引き付ける為には、何よりもまずスピードです。リードブロックが間に合わないくらい速いタイミングで、相手にコミットで飛ばせることを最優先すべきです。それにはやはり、セッターとアタッカーのコンビネーションが重要となってきます。その為には、女子のように同一チームの選手を何人かスタメンに揃えるのが手っ取り早いです。既に出来上がっているコンビネーションの、後は完成度を高めていけば良いのですから。だから、宇佐美選手を正セッターに据えるなら、青木選手か菊地選手の最低でもどちらかをメンバーに加えるべきだし、もしも斎藤選手をセンターとして選出するなら、山口選手を控えでも良いから選出するべきだし、当然、そういう人選がなされるものだと思っていました
さて、今回の候補メンバーに話題を戻しましょう。セッターとして選出されたのは、真鍋選手(松下電器)、宇佐美選手(NEC)、阿部選手(東レ内定)の3名。これに対してセンターは、齋藤選手(東レ)、小林選手(東レ)、伊藤選手(堺ブレイザーズ)、山村選手(サントリー)の4名。阿部選手は東レに内定していますが、今リーグでは一度も出場していません。
……正直、田中監督が、日本バレーボール協会が何を考えているのかさっぱり分かりません。杉山選手が出場できることになって、それで満足なんでしょうか。それともあくまで、W杯のあれは戦術であって、レフトとスーパーエースの3人だけで攻撃を組み立てるつもりなんでしょうか。センターブロックが追い付けないほど速い並行トスなど使えばそれでも行けるかもしれませんが、そんな速いトスを打つにはそれこそコンビネーションが重要なんですけどね。
とにかく、候補が決まってしまったから仕方がないです。時間はないですが、なんとかお互いのコンビネーションを高めていって欲しいです。
<追記>
あくまでもサーブ&ブロックにこだわるならば、松下電器の北川・今井両選手のうちどちらかが選ばれても良かったのではと思います。少なくとも今シーズン、松下電器はそれで成功しているわけですから。
<更に追記 2/24>
センターと言えば、W杯出場メンバーの中からJT・尾上選手が外れています。
正直に言わせてもらうと、個人的には予想通りであったわけですが(ファンの方達ごめんなさい)、しかしそれは前述の通り、セッターとコンビが取れている、同一チームの選手と入れ替えることが前提での話です。
結局、所属チームの異なる選手を選ぶのであれば、少なくともW杯まで積み上げてきたものがあるわけですから、尾上選手を残すべきだと思いました。
もしかして、実は怪我してるとか?
尾上選手自身が辞退したとか?
でなければこの件に関しても、田中監督及びバレーボール協会の意図を図りかねますね。
コメント
正直管理人さんと同じように毎年選考には疑問を感じます!でも私の考えは少し違っていて力のある選手を選べばそれでいいと思います。確かに管理人さんの言うとおり所属チームが同じであればコンビができあがっている…たとえば去年のWorld Cupで越谷の怪我によって代わった細川の宇佐見とのコンビは抜群でした!しかしサッカーや野球でもいえるように力のある選手というのはコンビの相手が違っても点が取れる選手だと思います!去年全日本に復帰した吉原は竹下とのコンビを合わせるために合宿中は朝五時に起きて自主練習をしたそうです!今の男子は環境が優しすぎる気がします…意識が低いのかもしれません…近年男女共に年齢や所属に関係なく選考し力のある者だけを選ぶ傾向にありますが選ばれた者の努力が足りないのかもしれません…なんとしても五輪に行かなくてはいけないという意識が大切なように思います!
投稿者: volleyball | 2004年2月24日 00:07
管理人さんの言う通りだと思います。男子のことについて言うと、日本は、やはり外国に比べて高さも、パワーも劣ります。その中で勝とするなら、プレーの正確さや、スピードのある計算された動きが重要だと思います。ひとまとめに言うのは簡単ですが、サーブやサーブカット。アタッカーとセッターのコンビネーション、同じチームからの複数の選手を選出するか否や…いろいろありますが、私が思うに、1番重要なポジションの一つが、センターだと思います。なんか最近は、ミドルブロッカーみたいな呼び方をするようですが、(ここからは、間違ったことを言ってたら聞き流してください)私は反対です。日本の場合ブロックも大事ですが、攻撃面でもとても重要なポジションだと思うんです。だから、あえてセンターと呼ぶべきだと思います。アタックをたくさん決める、スーパーエースのような活躍は、いりません。速攻で、ブロックを引き付けサイドに決めさせる。いい意味での、“騙し屋”になってほしいです。そう言った技術もスキルもある選手が、選ばれるべきだと思います。女子はそれが上手く出来ていて、レフトは若いけど、センターは何度も大舞台を経験してきた選手です。男子もこのポジションの意外な重要性に気付いてほしいと思います。長々とすみませんでした。
投稿者: 我夢翔 | 2004年2月24日 00:27
私も管理人さんと意見は似てます。過去、全日本が強い時は、女子は日立、ユニチカの単独チームに足りない戦力を補強してきました。男子も松平ファミリーとか言われてました。もちろん時代の変化はありますが世界と戦うのには、緻密なコンビバレーしか日本には無いと思います。私は時代遅れと思われるかもしれませんが、やはり過去の日立のように強いチームが出て来て単独チーム+補強というチームが1番望ましいと思ってます。まあ今は男女共そういうチームは無いので、しょうがないとは思いますが。
投稿者: ゆう | 2004年2月24日 00:34
>volleyballさん
W杯時、吉原選手と竹下選手のコンビはいまいちでしたね。
もちろん、杉山選手と比較してしまうからですし、吉原選手はライトのポジションで練習していたというのもありますが。
いかに志を高く持っても、時間は限られていますから、到達できるレベルにも限度がありますね。
正直、本気でオリンピックに出たいなら、Vリーグなんかやらないで、ずっと全日本の合宿やってれば良いのにと思います。
ただしやっぱりそうもいかないので、限られた時間の中で、ベストな人選をすべきだと思うんです。
>我夢翔さん
賛同頂きありがとうございます。
世界のバレーはラリーポイントになって以降、「サーブ&ブロック」に偏ってきているんですけど、何もそれにお付き合いすることはないですよね。
相手のサーブを一発で確実に切ることができれば、例え相手のスパイクをブロックできなくても、負けることはないんです(交互に点数が入って延々デュースが続く)。
何かこう、田中ジャパンが間違った方向を向いているような気がして仕方がないです。
>ゆうさん
今の全日本女子はNEC色が強いですよね。それはやはり、セッター竹下選手の影響が大きいし(彼女は現在JTの人ですが)、事実、彼女を中心にチーム作りがされている感があります。
監督がセッター出身だからかもしれません。
全日本=特定のVリーグチームというのは、正直日本バレーの発展を考えるとあまり好ましくないでしょう。
ただ、チームの核となる部分、最も繊細なコンビネーションを要求されるセンターとセッターくらい、同一チームから選出しても良いんじゃないだろか、と思いますね。
田中ジャパンの選手構成や戦い方を見ていると、しっかりとした戦術のもとにチームの総合力で勝とうとしているのではなく、単に選手個々人の能力で勝とうとしているように思えてならないです。
投稿者: 管理人 | 2004年2月24日 03:45
そうですね!私も柳本監督の考えてる事は理解できるので選手構成も予測できます。W杯で足りない部分をきっちり補強してきたな!と思いました。サーブカットに入る吉原選手の控えに大友、鈴木選手(二人共、竹下選手と組んだ事がある)そして全日本の生命線の高橋選手の控えに成田選手(竹下選手とNECで活躍)竹下選手に足りない高さを辻選手、温水選手が補う等です。荒木、有田選手の可能性を見てみたい気持ちも分かります。田中監督は厳しい意見ですが、考え方が全然分かりませんし理解も出来ないです。
投稿者: ゆう | 2004年2月24日 04:33
ついでに単独チームが望ましいと思うのは、大林さんの本中に日立はリーグ期間中も仮想ソ連等のオリンピックの練習をしてたそうです。攻撃のコンビばかりじゃなく守備、ブロックシステム等、勝ちに行くためには、どれだけ時間をかけても足りないと思うので…。吉原選手もそれを知ってるので努力してるんだと思いますよ。
投稿者: ゆう | 2004年2月24日 05:14
女子の場合は直近のアテネだけでなく2008北京(さらに2012もかな)まで視野にいれてるのが見えるんですよ。
だから14番以降はゴールデンエイジメンバーからの選出になったんだろうし、実戦での経験の伝承ということで吉原キャプテンやイクさんの選出があるんだろうし。
対する男子の場合って、どこかVオールスターズ=ベストメンバーっぽい雰囲気が感じられてならないんですが。
投稿者: TAM | 2004年2月24日 08:51
私は、専門的なことはあまり分かりませんが、センター攻撃人に期待大です。あとは、問題はサーブ…強いサーブを打ち込んで相手のレシーブを崩す作戦は分からないでも無いですが…でも、結局入らなければ相手に得点を与えてしまうんですよね。だから、そから辺のサーブのやり方も考えて試合に臨んでほしいです。たとえば、一度失敗したら安全サーブに切り替えるとか…なんか方法が有るはずですよね。あと、メンバー選びの事ですが、ファン投票も選考の一つに加えて見た方が良かったのでは無いでしょうか?結構、ファンの皆さんの目って確なものですよ。
投稿者: たかじゅん | 2004年2月24日 09:59
>ゆうさん
大林さんの話はどこかで読みましたね。
「どれだけ時間をかけても足りない」というのも良く分かります。
ただ、どこかのVリーグチーム=全日本という図式は、国内での競争を無くしてしまい、日本バレーのレベルの底上げが期待できなると思います。
長らくそんな状態が続いていたのも、前回の五輪出場を逃した原因の一つではないかと思うのです。
バランスが難しいですね。
>TAMさん
男子の「Vオールスターズ=ベストメンバーっぽい」に同意。
本来なら戦術に合わなければ、どんなに人気や実力があっても選ばれないこともあるはずですね。
>たかじゅんさん
強いサーブを打つには、まず相手のサーブを確実に切ることができないといけないと思います。
それができれば、例えサーブをミスしても、すぐにサーブ権を取り返せる訳で、大量失点には繋がりません。
その辺のことが「すぽーん」と抜けているんですよね、少なくともW杯時の全日本男子には。
メンバー選出時のファン投票の権は、個人的にはNGだと思います。
やはり監督の思い描く戦術、チーム像というものがあって、それに合った選手が選ばれるべきですから。
ただ、今回の候補メンバーを見てみると、ファン投票で選んでも大差ないような気はしますけどね。
投稿者: 管理人 | 2004年2月25日 19:54